平成25年度PA会国際研修(第4回)のご報告

中国の意匠制度には、日本の意匠制度と異なる点が多く、そのうち日本の意匠制度に比して利用し易いと思われる点もたくさんあります。しかし、それはあまり知られていません。また、昨年65万件にも上る中国意匠登録出願のうち、日本出願人からの出願数は5千件にも満たない状況にあります。その中、中国に進出した日本企業が意匠権侵害として提訴されるケースが増えています。そこで今回は、講師に北京林達劉知識産権代理事務所の所長である劉新宇(Linda LIU)先生をお招きして、中国意匠制度の特徴(日本との違い)を中心に、中国意匠実務についてご講演いただきました。劉新宇先生は、日本と中国との間の出願を多く扱った経験をお持ちで、日本語の著書「中国特許実務基礎」、「中国商標実務基礎」や専門誌に発表された多くの論文により当業界ではご高名な先生です。

日本をはじめとする世界各国の意匠制度と異なる点として、例えば、独立して販売または使用できない物品のデザインは保護されず、したがって、部分意匠は認められないことや、意匠に係る物品の名称・用途、創作の要点を明記した意匠の簡単な説明を出願に必須の書類として要求されることなどが紹介されました。一方で、中国では一件の出願に最多で10個の類似する意匠を含むことができ、また、ヨーロッパなどでは意匠として認められないような形態についても出願できることがあるなど、出願人に有利な面もあり、従って、中国への意匠出願を考慮する際、単純に日本の意匠制度の知識に基づいてものを考えず、中国代理人に様々な可能性について確認したほうがいいと注意されました。なお、物品の名称についての翻訳が間違って、「車」に関する意匠が玩具の意匠として登録され、結局模造品に対する権利行使ができなかった例も紹介されました。

質疑応答の時間には、同席した同事務所の代表取締役魏啓学先生から、意匠に関する無効審判及び訴訟における留意点を補足していただきました。魏啓学先生は、審判及び訴訟の経験の豊富な弁護士の先生で、日本の知財業界でもご高名な先生です。魏先生のお話もとてもご好評でした。また、魏先生のユーモアな話し方により度々会場が笑い声に包まれました。

セミナー後に行われた懇親会では、劉先生、魏先生の両先生に参加していただき、受講者と交流を深めていただきました。

コメントは停止中です。